ティー・エポック・コンサルティング株式会社
T-Epoch Consulting


おいしい炒飯の作り方と教育・訓練
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  唐突ですが、皆さんはおいしい炒飯の作り方をしっていますか。
  右の図を見てください。これはあるTV番組がベテランの料理人の行動を観察し、その手順と時間を記録した結果から作成したものを絵にしてみました。
  お皿に盛り付けるまでに8工程あります。各々の時間がデータ化されていますので、それに従って作業していけば、誰でもおいしい炒飯ができるというわけです。  
  さて、理屈では「誰でも作れる」のですが本当でしょうか。
  確かに手順だけでなく、各工程にかける時間もデータ化されていますから、それなりのものが作れそうです。
  それでは、逆にこの手順とデータを手にした人が誰でもおいしい炒飯を作るためには、何が必要でしょうか。ここでは素材の良し悪しを議論するつもりはありませんから、それは除外してください。
  例えばこの手順とデータを手にしたとき、マニュアル片手に見ながらうまくつくることができるでしょうか。あるいはよく手順を覚えていず、ときどきマニュアルを開いて確認しながら作業していておいしい炒飯が作れるでしょうか。

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  京都・上七軒のある置屋でのお話です。
  入って間もない舞妓さんたちが、踊りの発表会の稽古を終えて帰ってきました。舞妓さんたちは踊りも覚えて、しかも間違えずに踊れて大満足です。その様子を置屋のおかみさんも見ていました。
  さて、置屋に戻ったとき、おかみさんは舞妓さんたちになんと言ったでしょうか。間違えずに踊れたのでほめてあげたいのでしょうが、意外にも厳しい言葉が飛びました。
  「振り付けを覚えたら踊りの稽古が終わりではないよ。振り付けを覚えたときから、本当の稽古が始まるんや。踊り込まなければ...」

  さて、おいしい炒飯の作り方に戻りましょうか。
  マニュアルを手にしただけ、または手順や時間を覚えただけで、おいしい炒飯が作れるでしょうか。私は難しいと思います。先ほどの置屋のおかみさんの言葉は非常に重要なポイントを突いていると思います。踊りも炒飯作りも同じです。マニュアルなど無くても作れる、時間など計らなくてもちょうど良いタイミングで調理ができるようにならなくてはおいしい炒飯は望むべくも無いのです。  

  踊りも炒飯も同じなら、我々の一つ一つの仕事も同じです。手順を覚えただけで仕事ができるつもりなっていてはいけません。よく「システム(しくみ、制度)」をつくれば良いという考えがありますが、その先が無くてはなりません。マニュアルを整備しただけで満足していてはいけないのです。
  マニュアルを整備してから、仕事の手順を覚えてからが、その組織にとっての勝負です。マネジメントシステムに限らず、「覚えてから」後にかける気持ちと時間とお金が少ない組織は意外に多いように感じます。
  社員は自らの価値を高めるために自助努力し、スキルアップを図らなければならない、と言います。確かにその通りだと思います。しかし、それは一面しか捉えていないのです。物事には幾つもの側面があります。社員が自助努力する一方で、組織として何をしなければいけないか。それも考える必要があります。
  単なる制度つくり、マニュアル作りで終わらせず、「その先」のために「何度も鍋を振り」ましょう。そして私たちの組織にとっての「おいしい炒飯」を作れるようになりましょう。  

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