ティー・エポック・コンサルティング株式会社
T-Epoch Consulting


拙速のすすめ
  
  時間をかけている割に良い仕事ができていない、いわゆる”仕事の遅い人”が多い、と常々感じてい
 ます。
  「拙速」という言葉はありますが、残念ながら「じっくり時間をかけさえすれば良いものができる」という
 意味での「巧遅」と言う言葉は聞いたことがありません。
  まさに「拙速なるを聞くも、巧遅なるを聞かず」というところでしょうか。

  決して「早くできれば仕事が雑で良い」ということではありません。最終的には質の高い成果が要求さ
 れるのはどの世界でも同じだと思います。また、時間をかけてじっくり良いものを作る、と考えることは
 悪いことではありません。
  それでも「巧遅なるを聞かず」です。私の経験から見ても”仕事の遅い人”の成果がハイレベルである
 確率は低いように思います。

  少し話しを変えますが、ソフトウェア開発におけるウォーターフォール型開発の短所の一つは、時間が
 かかるということよりも開発の終了段階にならないと「目に見えてこない」ことだと思います。まだソフトウ
 ェア開発は納期が定められているので、一般的にはある一定期間が経つと成果を手にすることができ
 るわけですが、これが事務的な作業だったり、何らかの業務改善、提案作業など通常業務とは別の社
 内プロジェクトだったりするとどうでしょうか。「出来たときが納期」となり、いつまで経っても「形」が見え
 ず、という事態になっているのではないでしょうか。
  仕事を頼んでもどこまでどのように作業が進んでいるのか連絡がなく、ある期限が来たときにミーティ
 ングしてみると「これが今までの成果か」というくらい質の低いアウトプットにがっかりしたことがあると思
 います。
  皆さんの周りにも”仕事の遅い人”はいませんか?
  改めて申しますが、一年必要な仕事を半年で終わらせろということではありません。妥当な見積りが
 できることは仕事を遂行する上で重要なポイントの一つですから。
  「妥当な見積り」で思い至ることですが、”仕事の遅い人”にあり勝ちなのは、頼まれた仕事を遂行する
 ためのプランが立てられないことでしょうか。プラン(計画)というと「線表」と思い込んでいる人が多いよ
 うですが、そのようなお粗末な計画しか立てられない人が”仕事の遅い人”には多いようです。(ちゃんと
 した「計画」とはなんだということに関しましては、また別な稿でお話したいと思います)

  「じっくり時間をかけて良いものを作ったつもりが、途中の経過報告や調整作業がなく、出来上がった
 ものはレベルが低いか依頼者の要求を満たさない見当はずれ」ということがあちこちで発生しているよ
 うに思います。依頼者は実は「納期」だけではなく途中経過も気にしています。ある作業を頼んだのに、
 「全然報告がない!どうなっているんだ!」と気をもんでいます。そこに質の低い成果物を持っていくと
 どうなるか。

  そこで私は「拙速」を薦めたいと思います。
  「拙速」とは、例えばソフトウェア開発で言えば、プロトタイピングとアイタレーション(繰り返し)の組み
 合わせによる作業の進め方です。サッと作って依頼者と確認して成果物の調整を行う。それを何度か
 繰り返してレベルを上げていく。
  事務的な作業でも同じです。多少ラフでも良いので「こんな感じ」「こんな方向性」というものを適切な
 タイミングで示しながらレベルを上げ、最終的には予め定めた納期に依頼者が満足するアウトプットを
 出す。
  こういうことができるためには、創造力だけでなく、成果物の全体像やそれに辿り着くまでの道筋ある
 いはそれに必要な能力や時間などをイメージできる「想像力」が必要です。それはきちんとした「計画」
 を立てられる力と言っても良いかもしれません。
  しっかりとした計画の下、「拙速」的な手法で依頼者の要求を取り込みながら、あるいは相手の期待
 感を取り込みながら、成果物としてのレベルを高める。
  皆さんも「拙速」をうまく利用してみては如何でしょうか。

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