プロジェクトマネージャの資質   

■スキルパスという言葉があります。メインフレーム時代ですと,マシンのオペレータ〜プログラマ〜SE〜プロジェクトマネージャというような仕事の道筋です。

 プログラマの5年選手が,SEになれるかというと,これはなれるかもしれません。開発サイドに近いSEは,プログラム能力や経験(うまくいった場合のベストプラクティスや,逆に問題を起こしたプロジェクトを乗り切った経験。いわゆる修羅場を経験しているか)などは,結構SEにとって重要です。
そのような経験をノウハウとして火が噴く前に手を打つというのが,SEの重要な能力といっても良いかもしれません。

 ところが,SEを何年かやって上級SE(システム全体のデザインができる)になり,そのままプロジェクトマネージャという図式は必ずしも成り立たないといえます。プロジェクトマネージャに必要な資質は,開発の能力とは別のところにあります。



プロジェクトマネージャに必要なスキルとは
■プロジェクトマネージャにとって必要なスキル(資質)はなんでしょうか。
を架けたりビルを造ったりするプロジェクトのマネージメントは,設計図通りのものを,納期通り・品質を管理して仕上げていくということが重要です。これらは,PMBOKなどという体系化されたプロジェクト管理方法論にまとめられています。 システム開発も,伝統的なホストベースの大規模開発ではこのような伝統的なプロジェクト管理の手法を使ってプロジェクト管理をしてきました。


接着剤の役割
ころが最近のスレッド型開発などは,要件が細かく変更になる場合があります。これらのプロジェクトマネージメントに対して,ケントベックらが提唱しているXP(エクストリームプログラミング)というプログラマを尊重した開発手法があり,実際にうまくXPが回れば数倍の生産性を生みます。ただし,XPはどちらかというとプログラマのどちらかといえば職人的論理です。一方プロジェクトマネージメントは,組織の論理です。  つまり,経営サイドの要求や管理要素を含みつつ,XPのようなプログラマのやる気をださせるプロジェクト推進が今望まれているのです。
 このために重要なのは,プロジェクトマネージャです。つまり,開発サイドに対してはいかに自主性を尊重して彼らのベストな成果物を引き出し,これをまとめて組織の仕事として合目的成果としていくかが求められているのです。いわば接着剤の役割です。

完成イメージを持つ
ロジェクトマネージメントの重要な仕事のひとつにリスク管理というものがあります。リスク管理とは,そのまま放置しておくと将来問題点になるリスクをいかに具現化する前に刈り取っていくかということです。
このような将来起こりうる芽をいかに見つけられるかは,プロジェクトマネージャの重要な資質です。これはシステムの完成形を頭に描けるかという能力です。自分の頭に描いた完成イメージをいかに開発者とか,経営者に伝えることができるかということでしょう。 自分の中で矛盾無く完成イメージが展開出来なければ,スケジュールも引けないし,イメージがなければそのイメージと違っているかどうかすら分からないと思います。こう考えると,自分のイメージと違ってきたらそれば紛れもなくリスクの芽であるといえるわけです。
  また完成イメージだけでなく,プログラマなどに指示を出す場合に,指示に対する完成イメージを常に持っていないと,なかなか起きてくるリスクを回避することが出来ません。

また,その中でリスクが無くならなかった場合のシナリオとか,回避するためのシナリオとかも常に,起こりうることを頭の中でイメージできるかどうかは重要な資質です。
 シチュエーションごとの完成イメージはどのようにすれば描けるようになるのでしょうか。先読みということは必要です。囲碁や将棋で何手先を読めるかは,勝てるかどうかにかなり影響します。あるいは,過去に経験した事柄で同じようなものを当てはめて,どうすれば防げるかという手を考えるというのも重要だと思います。

やはり簡単に考える
雑で混沌としたことを,いかに整理して,簡単なピースに分けられるかということもプログラマだけでなくプロジェクトマネージャにも必要です。80年代に言われていた構造化分析とか,  最近のオブジェクト指向などというのも,まさに複雑なことをいかに整理して,簡単に考えるかということに他なりません。

常に仕事を4つにランク付けする
う一つ重要な点は,常に重み付けを考えることです。これは,プロジェクト管理に限らず,ビジネスの基本でありますが,やるべきことを
次の4つに区分けします。

@重要で,かつ緊急性がある
A重要だが,緊急性が無い
Bあまり重要でないが緊急性がある
C重要でもないし,緊急性もない
(いわゆるあればよいなという部分)
プロジェクトの進捗管理を行い,次週やるべきことあるいは明日やるべきことを整理する際に,ToDoリストなどから常にこの4つの重みをつけて順位をつけていけるようになれば,プロジェクトマネージャとして独り立ちできたといってもよいでしょう。